@article{oai:togaku.repo.nii.ac.jp:00000816, author = {前原, 正美 and 前原, 鮎美 and Maehara, Masami and Maehara, Ayumi}, journal = {東洋学園大学紀要, Bulletin of Toyo Gakuen University}, month = {Feb}, note = {2021 年9月,菅義偉政権の後を受けて就任した岸田文雄首相は,小泉純一郎元首相がつくりだした日本は「新自由主義」に支えられた社会であったと批判し,岸田政権では「新しい資本主義社会」の形成を目指す,と宣言した。そのために岸田首相は,「従来の分配政策の改善なくして経済成長はなし」という主張をし,分配政策を重視した経済政策の施行によって,経済成長を実現し,豊かな社会の形成を目指すことを主張した。  J. S. ミル(John Stuart Mill, 1806-73)は,『経済学原理』(1848)において,国家が何の方策も講じなければ,最先進国イギリスは経済格差や社会的貧困をかかえたままで「停止状態」(Stationary State)の時代に突入する,と主張し,「停止状態」が自然必然的な帰結であるならば,国家による経済政策によって,「停止状態」の下での豊かな経済社会の実現こそを達成しなければならない,と主張した。J. S. ミルが示す経済政策と将来社会のヴィジョンは,今後の日本の政治経済の方向を考えるうえで,大いに参考となる。  J. S. ミル「労働費用・利潤相反」論によれば,「労働者の生活水準を規定する」要因は,「実質賃金」であるが,これに対して資本家にとって重要な要因は「利潤率」の増大である。そして「利潤率」は,「労働費用」(cost of labour)によって左右される。つまり資本家が「利潤率」の増大を求めるならば,「労働費用」を低下させなければならない。すなわち,資本家は,たとえ従来よりも少ない雇用労働者の使用によって,従来以上の生産物を生産できれば,一方では,「労働費用」が低下した分だけ資本家の「利潤率」は増大し,他方では労働者の「実質賃金」は増大する。重要な経済政策は労働者一人当たりの「労働能率」の向上である。  アベノミクスでは,1.金融緩政策論,2.財政政策論,3.経済成長戦略を経済政策の3本の矢として経済成長の実現に伴う実質賃金の増大を目指したが,岸田首相が分配政策論の内容を国民の所得向上の実現と規定していること自体,岸田政権は労働者の生活水準向上に経済政策の重点を置いた,アベノミクスとは対立する政権である。  ミルにひきつけていえば,岸田首相は大企業としての株式会社が十分に利益を上げる体質となるように環境整備を行い,かつまた株式会社内における資本家自身による経営改革を通じて労働者一人当たりの労働能率が向上するように指導してゆく必要がある。}, pages = {133--149}, title = {現代日本の経済成長論と分配の方向性について : イギリス経済学説と現代の政治経済の行方}, volume = {30}, year = {2022}, yomi = {マエハラ, マサミ and マエハラ, アユミ} }